【FPライフ・4C通信 No.21】
はじめに
ここまで2回にわたり、「相続税が生まれた理由 〜120年の歴史をたどる物語〜」をお読みいただき、ありがとうございました。
1905年の日露戦争。
戦後の税制改革。
90%という最高税率の時代。
そして一度は50%まで引き下げられた税率が、2015年には55%へ引き上げられたこと。
相続税は、120年の間、社会の変化とともに姿を変えながら続いてきました。
第6章 相続税をなくせば、すべてが解決するのでしょうか?

相続税について考えていると、「いっそのこと、なくしてしまえばいいのでは?」という意見も耳にします。
確かに、相続税がなくなれば、税金の負担は軽くなるでしょう。
しかし、それだけで本当にすべてが解決するのでしょうか。
もし相続税がなくなれば、代わりに別の税金を増やす必要があるかもしれませんし、格差の固定化が今より進む可能性もあります。
その一方で、家族の財産を守りやすくなるという考え方もあります。
歴史は、「正解」を教えてくれるものではありません

120年前、当時の人たちも悩みながら制度を作りました。
戦後の人たちも、社会に合わせて制度を変えてきました。
そして今、私たちもまた、同じように考える立場にあります。
歴史を振り返ることで分かるのは、「今の制度が唯一の正解ではない」ということです。
社会が変われば、制度も変わります。
だからこそ、私たち一人ひとりが考え続けることが大切なのだと思います。
私は、この4つを考え続けたいと思っています
私はファイナンシャルプランナーとして、「相続税は高いか、安いか」をお伝えしたいわけではありません。
120年の歴史を学んで感じたのは、私たちが本当に考えるべきことは、もっと別のところにあるということです。
例えば……
① 誰に負担を求めるのか
社会を支えるための負担は、誰が、どのように担うのでしょうか。
② バランスを考える
家族が築いてきた財産。社会全体の公平性。私たちは、そのバランスをどう考えるのでしょうか。
③ 格差の固定化をどう防ぐのか
親から受け継ぐ財産によって、人生のスタートラインが大きく変わる社会を、私たちは望むのでしょうか。
④ 相続税をなくすなら、その役割を何で補うのか
もし相続税を廃止するなら、相続税がこれまで担ってきた役割を、別の制度でどう補っていくのでしょうか。
おわりに
相続税の歴史を知ることは、「税金の勉強」をすることではありません。
社会の仕組みや、家族の財産をどう引き継ぐのか、そして次の世代へ何を残していくのかを考えることだと思っています。
120年前に私たちの先人が悩みながら作った制度は、今を生きる私たちの考え方次第で、これからも姿を変えていくかもしれません。
皆さんは、この120年の物語を読んで、どう考えましたか。
参考資料
本シリーズの相続税の歴史や制度の変遷については、主に以下の公的資料を参考に、一般の方にも分かりやすいよう再構成しています。
- 財務省『もっと知りたい税のこと(令和6年版)』
- 国税庁・税務大学校『税務大学校論叢 第35号 相続税100年の軌跡』
