相続税について、こんな疑問を持ったことはありませんか?
「親が一生懸命働いて残した財産なのに、なぜ相続税がかかるの?」
「すでに所得税などを払ったお金なのに、なぜもう一度税金を納めるの?」
実は私も、相続について学び始めた頃、同じ疑問を持っていました。
現在、日本の相続税の最高税率は55%です。
実は歴史を振り返ると、最高税率が90%だった時代もありました。
一方で、世界には相続税そのものを廃止した国もあります。
では、なぜ日本では120年以上も相続税が続いているのでしょうか。
今回は、その答えを探すために、
相続税が生まれた時代まで一緒にさかのぼってみたいと思います。
第1章
相続税が生まれたのは120年前

日本で相続税が誕生したのは1905年。
ちょうど日露戦争の最中でした。
戦争には莫大な費用がかかります。
その財源を確保するため、相続税が導入されました。
戦争というきっかけから相続税は導入されましたが、戦争前から欧米の税制を参考に、
「所得税だけでは補えない部分を相続税で支える」
という考え方が研究されていたそうです。
つまり、
相続税は単なる"戦争税"ではなかったのです。
そして何より興味深いのは、
「戦争が終わっても相続税はなくならなかったこと」です。
なぜ残ったのでしょうか。
その答えは、戦後の大きな社会の変化にあります。
第2章
戦後、日本の「家族」が変わった

1949年 シャウプ勧告──戦後日本の税制改革の出発点
財閥解体や資産の集中是正を背景に、相続税は「資産再分配」という新たな役割を担うようになります。
戦前の日本には「家制度」がありました。
財産は家督相続人が引き継ぐことが基本でした。
しかし、戦後、
民法が改正され、「家制度」は廃止されます。
現在のように、配偶者や子どもたちが財産を相続する仕組みへ変わりました。
税制も大きく変わります。
1949年にはシャウプ使節団が日本の税制改革を勧告。
その流れの中で、相続税には
「財産の集中を防ぐ」
という新しい役割が加わりました。
その象徴とも言えるのが、
最高税率90%という制度です。
もちろん、すべての財産に90%かかったわけではありません。
ごく高額な財産に適用された最高税率ですが、
当時は
「世代を超えて富が固定化することを防ぐ」
という考え方が強く反映されていました
次回へ
ここまで、相続税が誕生した理由と、戦後にその役割が大きく変わったところまで見てきました。
その後、日本の相続税はどのように変化していったのでしょうか。
一度90%まで引き上げられた最高税率は、その後、時代の流れとともに少しずつ引き下げられていきます。
その背景には、どのような社会の変化があったのでしょう。
「なぜ相続税は変わり続けたのか」
をテーマに、高度経済成長から2015年の税制改正まで、その歩みを一緒にたどっていきます。
参考資料
本記事は、財務省・国税庁の公的資料を参考に、一般の方にも分かりやすいよう再構成しています。
・財務省 『もっと知りたい税のこと(令和6年版)』
・国税庁 税務大学校
『税務大学校論叢 第35号 相続税100年の軌跡』
