前回のおさらい
前回は、1905年に日露戦争をきっかけとして相続税が誕生し、戦後には「財産の集中を防ぐ」という新しい役割を担うようになったところまでお話ししました。
では、その後の日本ではどうなったのでしょうか。
一度90%まで高くなった相続税は、その後、少しずつ緩和されていきます。
そして2015年には、再び強化される方向へ転換しました。
なぜ、そのような変化が起きたのでしょう。
今回は、その流れを一緒に見ていきましょう。
第3章
相続税は緩和されていった

戦後の日本は高度経済成長の時代を迎えます。
所得は増え、土地の価格も大きく上昇しました。
特に都市部では、昔から住んでいるだけなのに、自宅の土地の価格がどんどん高くなっていきました。
その結果、本来は富裕層だけが対象だったはずの相続税が、一般の家庭にも関係する税金になり始めます。
「家を売らなければ相続税が払えない。」
そんなケースも生まれるようになりました。
そこで政府は、
〇基礎控除を拡大したり、
〇税率を引き下げたりして、
少しずつ負担を軽くしていきます。
最高税率も、
1905年 相続税誕生
↓
1950年 最高税率90%
↓
2003年 最高税率50%
↓
2015年 最高税率55%
と変化していきました。
しかし、その一方で、別の問題も見えてきます。
第4章
2015年、流れが変わった
相続税は、負担を軽くする方向へ進んできました。
ところが2015年。
流れが大きく変わります。
基礎控除が縮小され、
最高税率は50%から55%へ引き上げられました。
相続税の対象になる人も増えました。
では、なぜでしょうか。
背景にあったのは、
「資産の再分配」
という考え方です。
もし大きな財産が何世代にもわたって同じ家族へ受け継がれ続ければ、
生まれた家庭によって人生のスタートラインに大きな差が生まれてしまう。
そうした格差の固定化を防ぐため、
相続によって移転する財産の一部を社会へ戻してもらう。
その役割を、もう一度重視しようという考え方でした。
第5章
世界では相続税をなくした国もある

ここまで読むと、
「やっぱり相続税は必要なのかな。」
そう思われるかもしれません。
では、日本以外、世界の「相続税」に関する考え方はというと、
日本と同様に相続税を維持している国もありますが、廃止した国もあるそうです。
理由はさまざまです。
維持する国は、
〇「富の集中を防ぐ」
〇「世代間格差を抑える」
という考え方を重視しています。
一方、廃止した国では、
〇「二重課税ではないか」
〇「事業や自宅を守りたい」
〇「税収に比べ行政コストが大きい」
などの理由が挙げられています。
つまり、正解が一つではなく、
それぞれの国が自分たちの社会に合った制度
を選んでいるのです。
次回はいよいよ最終回
ここまで120年の歴史をたどってきました。
では、
もし相続税をなくしたらどうなるのでしょうか。
最後は、
「相続税をなくすか、残すか」
という二択ではなく、
私たちは何を基準に考えるべきなのか。
一緒に考えてみたいと思います。
